このページでは、千利休が確立した茶道具の簡単な歴史や代表作品、買取に出す際の鑑定ポイントなどを紹介します。
茶道具というと茶碗と茶器をイメージするかと思いますが、他にも茶道具として骨董品価値のある道具があります。ここでは主なものを紹介しておきましょう。
和物、唐物、高麗茶碗の3つに分類され、さらにそれぞれ細分化されています。濃茶用は文様がなく、薄茶用は文様があるものを使うのが基本ルール。
また、季節によっても使われる茶碗は変わります。冬はお茶が冷めにくい筒茶碗、夏は口の広い平茶碗。そして、表面の柄が桜なら春、ツタなら秋と形や描かれている柄によっても使い分けられているのです。
茶道で使われる一般的な茶碗は、1,000円から3,000円ほどで購入できますが、種類や質により200万円以上もする茶碗もあります。素人目には判断が難しいアイテムなので、専門の買取業者に鑑定を依頼すると良いでしょう。
茶器は広い意味では茶の湯で使われる器全般のことを言いますが、狭義では抹茶を入れる容器を指します。濃茶用が茶入、薄茶用が薄茶器です。
茶入は和物と唐物に分類される陶磁器。デザインは、肩が張った形の「肩衝」、持ち手や口の付いた「四滴」、口元がすぼまっている「茄子」などさまざま。象牙のふたが使われており、仕覆(しふく)という装飾をほどこした袋に入れられています。陶磁器なので、持ち運びの際には割れないよう注意が必要です。
薄茶器は塗り物でできた器です。形が似ていることから名付けられた「棗(なつめ)」や「金輪寺」「吹雪」などの種類に分かれています。黒塗りにされたものが主ですが、他には一閑張り、蒔絵などがほどこされているものも。薄茶器を総称して棗と呼ぶこともあります。
茶筅は抹茶を点てるときに使う道具です。竹の先端を裂いて内側へ曲げ作られます。使われている素材は主に竹。先の部分は「穂」といい、穂の荒いものは濃茶、穂の細かいものは薄茶用として使われています。流派によって使用する竹の種類に違いがあり、裏千家の茶筅は白竹を使ったものです。
茶筅は職人の技術を集めて作られる工芸品ですが、抹茶をかき混ぜる役割りのため、消耗品でもあります。茶人の習わしとして、大事に使った茶筅を炊き上げる「茶筅供養」という習慣があり、全国には供養した茶筅のための茶筅塚があります。
お茶を点てるため炭を入れて湯を沸かすのが釜です。鉄製で、季節によって使い分けます。寒い季節は大きめの釜を使い部屋を暖めて、客人が寒くないようにします。これを「炉」と言い、炉で使う釜を「炉釜」と言います。暑い季節になると、小さめの釜にして熱気を感じさせないようにお茶を点てます。これは「風炉」と言い、風炉で使う釜を「風炉釜」と言います。
釜の代表的な生産地は、京都、佐野、芦屋など。産地によって釜の特徴が異なります。
水指はお茶を点てるときに水を使うための道具です。茶碗をすすいだり湯を足したりと水指の出番は多くあります。素材は金属や磁器、陶器、塗り物、木製などさまざま。種類が多いからこそ、使う側は他の道具や季節との調和を考える必要があります。
骨董品としての価値があるかどうかは、箱書きがあるかどうかや作られた年代、材質にもよりけり。時に高い価値が付くことがありますので、安易に売ってしまわずに一度鑑定してもらうのがおすすめです。
ここでは代表的な茶人とその作品について紹介します。著名な作家のものは、本物であれば高額の査定額が付いています。
■玄々斎(げんげんさい)
茶道裏千家十一世家元。10歳で裏千家の家元となり、茶の湯の近代化に尽力しました。
茶碗「裏千家11代玄々斎作赤茶碗」
玄々斎の手による茶碗の1つ。赤茶色の肌と力強い作風が特徴です。
茶碗と箱が揃っていたため、300万円の鑑定額が付いています。碗の裏には「玄々」と押印されていました。一般のコレクター宅にあったもので、母親の遺品の1つだったそうです。
■楽道入(らく どうにゅう)
楽家の3代目当主。安土桃山時代から江戸時代初頭に活躍していた楽家第一の名工と名高い陶芸家です。「のんこう7種茶碗」ほか多くの名物茶碗を制作しました。
茶碗「楽家三代 道入の黒楽茶碗」
ガラス釉を使い輝く黒い色を表現した黒楽茶碗。それまでの楽家の作風とは違った美しさが特徴です。
薄く平らな形状で、収められた箱には「まるで夏の水たまりのようだ」と書かれています。鑑定額は500万円と破格の値段です。
■楽宋入(らく そうにゅう)
江戸時代前期から中期の陶工。楽家4代目の弟子で入り婿。楽家5代目として活躍しました。
茶碗「楽家五代宗入の黒茶碗」
初代楽家の作風へ回帰した美しい黒茶碗。箱と合わせて鑑定額は500万円にもなります。初代や利休が提唱した侘びの心を再現した茶碗です。箱は武者小路千家七代直斎宗守のものとなっています。
■楽了入(らく りょうにゅう)
江戸時代後期の茶碗師。千家十職の1人で楽家の九代目にあたります。
茶碗「楽家九代 了入の茶碗」
利休が取り寄せたという茶碗を手本に作られたもので、箱には「早船写」と書いてあります。利休が早船で取り寄せたことに由来しているそうです。早船とは江戸時代に就航していた船足の速い船のこと。
碗は了入らしく、正面に大胆な削りがはいっていて、鑑定額は150万円と高額です。
■楽弘入(らく こうにゅう)
楽家の12代目当主で、明治から昭和にかけて茶道が衰退した時代を生き抜いた陶工。温和な作風が特徴です。
茶碗「楽家十二代 弘入の赤茶碗」
鮮やかな赤と緑のバランスが特徴の茶碗です。温和な雰囲気の中にもへら使いには豪快さがみてとれます。表面には福寿草が描かれており、その絵もたくみな筆遣いです。鑑定額は60万円ほど。
楽家に代表される陶工や茶道具の職人たちを「千家十職」と呼びます。千家の流れを組む茶の湯の道具を代々にわたって作ってきた人々です。
利休の提唱した茶道は、茶室という狭い空間を使ったもの。その中で独特の作法が作り上げられていきました。作法にのっとった茶の湯をたしなむには、専用の道具が必要で、その道具を作ってきたのが千家十職の職人たちです。現代にも、その技は受け継がれています。
茶道具の価値は流派とも大きく関係します。例えば、以下の品は高額買取のポイント。
茶道具を売るときに気を付けたい点も合わせてご紹介します。
■表千家、裏千家による箱書きがある
箱書きとは、茶道具を収める箱に書かれている「題名」や「作家名」のこと。作家本人が書いたり鑑定家が書いたりし、その茶道具が本物であることを証明しています。茶道具の場合、表千家や裏千家による箱書きがあると買取額がアップ。ただし、箱書きが本物でも中の茶道具が偽物の場合もあります。その場合は、箱書きのみが高値で取引されることも。茶道具を買取に出す場合には、中身も箱も見てもらうようにしてくださいね。
■千家十職が作った道具である
茶道具の中でも千家十職が手がけたものは高額での買取になります。千家十職はいわば、三千家御用達の職人たち。その時その時の茶の湯を彩ってきた茶道具たちは、現代でも貴重な品として収集家たちを魅了しています。
■家元による作品である
茶道家の家元自身の作品も高額での取引がされています。千利休ゆかりの品や表千家13代家元の即中斎の手がけたものなどは、特に高額での取引がされていますよ。
■贋作の特徴
茶道具が贋作かどうかは、専門知識を持った鑑定士でないとなかなか見抜くことはできません。ですが、1つ注目したいのが「箱」です。江戸時代中期以前は杉の木を使った箱が主流でした。ですから、作品がその時代以前の場合、箱の素材が「桐」であることはほとんどありません。桐の箱が使われるようになってきたのは、江戸時代中期以降だからです。この場合、箱が偽物であることが見抜けます。
■美術品としての茶道具と実用品としての茶道具の違い
時の権力者が自らの力を誇示するために、豪華な茶室や茶道具が作られた時代がありました。その豪華な茶道具は古美術品として一定の価値があるとされています。しかし、利休の提唱した茶道の心得とはかけ離れていたため、豪華さを良しとしない風潮もあります。茶道具が豪華に装飾されていると、茶本来の味や色を楽しめないからです。 買取に出す場合、取引したい品が「観賞用の美術品として価値があるのか」「茶道具として価値があるのsか」、一度考えてみましょう。
千家・裏千家ゆかりの品であること、贋作ではないこと、どんな価値があるのか知ることで、より高額な査定額が付くことでしょう。